2021年度全面実施の新学習指導要領により,中学校の英語の授業はすべて英語で行うことになります。
もちろん,それを見据えてすでに英語で授業を行っている先生方は増えてきていますが,必ず出る質問がありますので,それに答えてみます。
1.「英語で授業をすると,生徒たちが分かってくれない……」
これは,難しい問題と見せかけて答えは簡単です。確かに,生徒が理解していないままに勝手に先生主体で授業を進めてしまっては,元も子もありません。
それでは,どのようにして解決するかというと……。
生徒たちの力を借りるのです。
例えば,生徒から「 school trip って何?」という質問が出たとします。
そんなとき,すぐに「修学旅行だよ」と日本語で答えるのではなく,こうしてみてはいかがでしょう。
“Hey, everyone. What does “school trip” mean?”
“You all went to Kyoto together, right?”
“Do you like to travel?”
すると,「京都?」「あー,旅行かー」「それじゃ,スクールって付いているから……」「あ,分かった! 修学旅行!」という声が教室に溢れます。
ここで,生徒たちは自分たちで気付くことの楽しさを実感するのです。
この進め方に生徒が慣れてくると,日本語でなく,英語で guess(想像する)→ talk(話す)ようになってくるので,より英語の授業が楽しくなります。
2.「授業中,ワークブックなどで語彙や文法を確認をする時間が必要……」
たくさんある質問の中で,これはかなりの数を占めます。
しかし,私の場合は,そもそも授業中にワークブックを開くことはほとんどありません。
その理由は,家でできることは学校でする必要がないからです。
学校では,教室だからできること,友人がいるからできることを意識して授業をするべきだと考えています。
ひとつ具体例を出すと,対話活動がそれです。
トピックを与えて考えさせたり,出来事について自分の経験を話したり,教科書の内容から自分自身のことに置き換えて表現することが多いです。
3.「対話は私もしたいですが,それでは入試の英語に対応できない……」
これは,単なる思い込みです。
コミュニカティブな英語の授業をしていては,「文法が疎かになる」「話してばかりだとテスト問題が解けない」「スペリングがいつまで経っても定着しない」という都市伝説に振り回されています。
言語習得について少し触れますが,赤ん坊が言語を習得していく段階をイメージしてください。
赤ん坊は成長するにつれて,4技能(「聴く」「話す」「読む」「書く」)をまさに( )内の順番で習得していきます。
そして,私のこの記事を読んでくれている人たちの中に,日本語に不自由している人はほとんどいないはずです。
それは,成長してきた過程できちんと日本語が身に付いているからです。
これは,日本語を「コミュニカティブな対話から習得してきた」からです。
つまり,きちんとコミュニケーションを取れるレベルまで自身の英語力を高めることができれば,英語の入試問題はすんなり解けるようになります。
しかし,目先のテスト(実力テストや全国学力状況調査)のことばかりを考えていると,どうしても日本語での文法説明や教科書本文の訳読が多くなってしまいます。
生徒たちには,英語という教科を通して,先の人生を考えられる余裕を持った人間になってほしいです。
まだまだ他にもたくさんありますが,今回はここまでにしておきます。
最後までお付き合いいただき,ありがとうございました。